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育の章

「一度勝つ」と「勝ち続ける」は、まるで違う――アワーバックに学ぶ、強い組織のつくり方

得点王を一人も出さずに8連覇。NBAの伝説的名将レッド・アワーバックが遺したのは、トロフィーの数ではなく「勝ち続けられる文化」でした。個人の寄せ集めではない、強い組織のつくり方を学びます。

※本記事にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。
一つのボールに手を重ねる五人(イメージ挿絵:和育道)
一つのボールに手を重ねる五人(イメージ挿絵:和育道)

不思議に思ったことはありませんか。

優秀な人ばかりを集めたはずのチームが、なぜかうまくいかない。逆に、飛び抜けたスターがいないのに、妙に強い集団がある。

仕事のプロジェクトでも、部活でも、地域の集まりでも。「一度うまくいく」ことと、「うまくいき続ける」ことの間には、思っている以上に深い溝があります。

一度勝つのは、勢いや運でもできる。けれど、勝ち"続ける"には、まったく別の何かが要る――。

その「別の何か」を、誰よりも知り抜いていた男がいます。NBAの伝説的名将、レッド・アワーバックです。

8連覇を成し遂げた、伝説の名将

レッド・アワーバックは、1950年代から60年代にかけて、ボストン・セルティックスを率いた指導者です。

その実績は、今も破られていません。8年連続を含む、9回の優勝。一人の監督が作り上げた王朝として、NBA史上に燦然と輝いています。

しかも彼のすごさは、勝った回数だけではありません。自分が現場を去った後も、セルティックスが勝ち続ける「仕組み」まで作り上げた。一過性の強さではなく、続く強さを組織に残した人でした。

では、彼は何をしたのか。その哲学は、驚くほどシンプルでした。

「得点王を、作らない」

アワーバックの哲学の根っこには、徹底した「チーム・ファースト」がありました。

普通、監督はスター選手に得点を集め、エースを育てたがります。ところがアワーバックは逆でした。全員で得点を分け合うことを重んじ、特定の一人に栄光を集中させなかった。

その結果、黄金期のセルティックスからは、リーグの得点王が一人も出なかったと言われています。個人記録の派手さはない。それでも、圧倒的に勝ち続けた。

彼の考えは、一貫していました。個人の記録は、チームの勝利の前では意味を持たない――。統計上のスターより、勝てる集団を選んだのです。

「地味な役割」に、誇りを持たせる天才

アワーバックが本当に非凡だったのは、選手一人ひとりに「自分の役割への誇り」を持たせたことでした。

彼のチームには、ビル・ラッセルという選手がいました。ラッセルは、華やかに得点を量産するタイプではありません。けれど、守備とリバウンド、そして味方を活かすプレーで、チームを根底から支えた。

普通なら評価されにくい「点を取らない選手」。しかしアワーバックは、その守備とチームプレーという役割を、最大限に称えました。結果、ラッセルは自分の仕事に強い誇りを持ち、史上最高のディフェンダーと呼ばれるまでになります。

華やかな得点役だけでなく、地味だが欠かせない役割を担う人間を、心から尊重する。「あなたの役割は重要だ」と全員に伝える。それが、一人残らず全力を出す集団を作りました。

彼は、選手を出身や肌の色で選ぶこともしませんでした。実力と貢献だけを見て人を起用し、時代に先駆けて多くの「壁」を破った人でもあります。判断の基準は、いつも一つ。「チームを勝たせられるか」でした。

「勝利の文化」を、次の世代へ

アワーバックの最大の功績は、勝ち方を"文化"にしたことでした。

ベテランが若手に、セルティックスの「勝つための姿勢」を伝える。その文化が、世代を超えて受け継がれていく。だからこのチームは、選手が入れ替わっても、監督が代わっても、勝ち続けることができました。

一人の名将がいる間だけ強いチームは、その人が去れば崩れます。けれど、組織そのものが「勝てる文化」を持てば、強さは受け継がれていく。

アワーバックが遺したのは、優勝トロフィーの数ではなく、勝ち続けられる仕組みそのものだったのです。

(同じNBAの名将でも、選手一人ひとりの成長から組織を作った人がいます。「勝て」と言わなかった名将――ジョン・ウッデンに学ぶ、人を育てる指導の本質も、あわせてどうぞ。)

今を生きる私たちへ

アワーバックの組織哲学は、スポーツの外でも、そのまま生きます。

個人の手柄より、全体の成果を優先する。 職場でもサークルでも、「自分が目立つこと」より「チームが勝つこと」を全員が大事にしたとき、集団は驚くほど強くなります。手柄の奪い合いが始まった組織は、たいてい弱い。

目立たない貢献に、光を当てる。 数字に出る成果を出す人だけでなく、場を支える人、細部を整える人、雰囲気を作る人。その「地味だが欠かせない役割」を、きちんと言葉にして称える。誇りを持った人は、期待以上の力を出します。

良い姿勢を、次の人へ受け継ぐ。 自分一代で終わらせず、後輩や次の世代に「大切にしてきたやり方」を伝えていく。個人の力は必ずいつか衰えますが、文化は残り続けます。

強い個人を集めることと、強い組織を作ることは、まったく別の仕事です。アワーバックが教えてくれるのは、後者こそが「勝ち続ける」ための本当の鍵だ、ということです。

おわりに

アワーバックには、伝説的な習慣がありました。

試合の勝利を確信すると、まだ試合が終わっていないのに、ベンチで悠々と葉巻に火をつけるのです。この「勝利の葉巻」は、彼のトレードマークであり、静かな自信の証でもありました。

けれど、その一本の葉巻の裏には、派手さとは正反対の地道な哲学がありました。全員で勝ちを分け合い、一人ひとりの役割を称え、勝ち方を次へ受け継ぐ。

華やかな一勝より、続いていく強さを。

あなたの周りのチームを、少しだけ「勝ち続ける組織」に近づける一歩は、案外、目立たない誰かの役割に「ありがとう」と光を当てることから始まるのかもしれません。

(アワーバックの学びを、他の3人の賢者との"共通点"から振り返るまとめ記事「学んでも、何も変わらない」あなたへ――まったく違う4人の天才に共通する、たった1つの答えも書きました。)

(「自分の手柄より、メンバーを称える」という姿勢は、1000年前の中国にも同じ言葉がありました。リーダーは、いちばん最後に報われる――范仲淹「先憂後楽」の覚悟もどうぞ。)

(スター選手ではなく「クラブそのもの」を大きくすることにこだわった監督が、サッカーの世界にもいました。「出て行け」と言われた監督が、26年勝ち続けた理由――アレックス・ファーガソン


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アワーバックが直感と信念でやり抜いた「勝ち方を文化にする」という仕事。それを現代の科学で解き明かしたのが、世界的ベストセラー『THE CULTURE CODE』です。

NBAのサンアントニオ・スパーズ、ピクサー、Google――勝ち続ける組織に共通する「文化のつくり方」が、豊富な実例で描かれています。チームや職場を「一度きりの成功」で終わらせたくない方に、まっすぐ響く一冊です。

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人物プロフィール:レッド・アワーバック

本名:アーノルド・"レッド"・アワーバック(Arnold "Red" Auerbach) 生没年:1917年9月20日 ― 2006年10月28日(アメリカ・ニューヨーク州ブルックリン生まれ) 国籍:アメリカ 分野:バスケットボール指導者・球団経営者(NBA) 主な所属:ボストン・セルティックス(1950〜1966年ヘッドコーチ、その後GM・球団社長・副会長を歴任)

経歴・功績

  • ヘッドコーチとして通算9度のNBA優勝。うち1959〜1966年の「8連覇」は、今も破られていないNBA記録。
  • コーチ時代とフロント(編成責任者)時代を合わせ、セルティックスの計16度の優勝に関わったとされる。
  • 得点を特定のスターに集中させず、全員で分け合う「チーム・ファースト」を徹底。黄金期のチームからはリーグ得点王が出なかったと言われる。
  • 控えの主力を切り札として投入する「シックスマン」戦術の先駆者としても知られる。
  • 人種の壁を破った先駆者でもあり、NBAで初めて黒人選手をドラフト指名(1950年)、先発5人全員が黒人という布陣(1964年)、主要プロスポーツ初の黒人ヘッドコーチ(1966年、ビル・ラッセルを選手兼任で起用)を実現した。
  • 勝利を確信するとベンチで吸った「勝利の葉巻」がトレードマーク。
  • 1969年、バスケットボール殿堂入り。NBA最優秀コーチに贈られる賞は、彼の名を冠して「レッド・アワーバック・トロフィー」と呼ばれている。
  • 人物像:個人の記録よりチームの勝利を何より優先し、地味な役割を担う選手を心から尊重した。名将が去っても勝ち続けられる「勝利の文化」を組織に根づかせた、常勝軍団の設計者。

    参考:ウィキペディア「レッド・アワーバック」

    現場監督 × バスケットボールコーチ × 地域活動家

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    タグ

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