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道の章

序ノ口まで落ちた男が、もう一度上を目指す——炎鵬という「道」

序ノ口まで番付を落とした力士・炎鵬。落ちても、壊れても、また土俵に上がり続けるその歩みから、「自らの道を究める」とは何かを見つめる。

※本記事にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。

土俵の上で、小柄な体が大の字になった。天を見上げたその一番に勝てば、関取への復帰が叶っていた。2026年初場所、十三日目。元幕内・炎鵬は、あと一歩のところで届かなかった。

「いつもより勝ちたい気持ちが強かった」。負けて天を仰いだ姿に、私は勝負の結果とは別のものを見た気がした。これは、勝ち負けの話ではない。落ちるところまで落ちた人間が、それでもなお自分の道を歩き続けるとはどういうことか——そういう話だ。

和育道の「道」とは、自らの道を究めること。炎鵬の歩みは、その言葉の意味をこれ以上なく雄弁に語ってくれる。

*この記事のためにあらためて調べ、自分なりに整理したものです。事実関係は公開情報に基づいていますが、解釈や感想は私個人のものです。

しこ名に込められた、三つの想い

「炎鵬」という名は、本人がつけたものではない。スカウトした横綱・白鵬が、五つも六つも案を考えた末に、最後に浮かんだのがこの名だったという。

身長167センチ、95キロ。角界では圧倒的に小さい。白鵬は言った。上にいけば体の差は広がる、そこを勝ち抜くには気持ちで負けず、常に燃えていくしかない、と。だから「炎」。珍しい字でしょう、と笑ったそうだ。

「鵬」は、師匠である白鵬から一字をもらったもの。そして下の名前「晃」は、小学生の頃に相撲を教えてくれた四歳上の先輩の名前だ。その先輩は、若くして事故で亡くなっている。憧れの人に活躍を誓って、炎鵬はその名を背負った。

燃え続けろという願い。師から受け継いだ一字。亡き先輩への誓い。三つの想いを名に刻んで、彼は土俵に上がった。名前そのものが、すでに一つの「道」だったのだと思う。

「ひねり王子」と呼ばれた栄光

2017年、宮城野部屋から初土俵。小さな体で大きな相手を投げ、いなし、土俵際でひっくり返す。その巧みな取り口は「ひねり王子」と呼ばれ、角界屈指の人気者になった。最高位は東前頭四枚目。技能賞も受賞した。

小兵が大男を倒すから観客は沸く——という単純な話ではない。あの相撲には、力でかなわない者が知恵と勘で勝負を組み立てる、戦術の美しさがあった。どこに体を入れ、どの瞬間に重心を奪うか。一瞬の判断の積み重ね。私はその設計図のような相撲に、いつも惹かれていた。

奈落——序ノ口までの転落

順風は長く続かなかった。

2023年夏場所の途中、脊髄を損傷する大怪我。命や日常生活に関わりかねない、力士として致命的な負傷だった。そこから七場所連続の休場。番付は最下層の序ノ口まで転がり落ちた。幕内まで上り詰めた力士が、いちばん下まで落ちる。これがどれほどのことか、相撲を少しでも知る人なら想像がつくだろう。

追い打ちもあった。所属していた部屋が暴力問題で閉鎖となり、別の部屋への転籍を余儀なくされる。再起の途上では、かつて自分を見いだしてくれた師匠までもが角界を去った。

支えも、居場所も、名付け親も。手にしていたものが、次々と崩れていった。

それでも、一歩ずつ

普通なら、ここで終わる。実際、これだけのことが重なれば、引退という選択は誰にも責められない。

だが炎鵬は、序ノ口から再び土俵に上がった。

復帰の道もまた平坦ではなかった。番付を戻す途中で今度は脚を剥離骨折し、また休場。上がっては怪我をし、また上がる。その繰り返しだった。それでも彼は、勝ち越しを重ね、少しずつ番付を押し戻していった。

ここで私が大事だと思うのは、彼が「劇的な復活」を一度に成し遂げたわけではない、ということだ。一場所ごとに、五勝二敗、六勝一敗と、地味に星を積む。派手さはない。あるのは根気だけだ。結果は後からついてくるもので、まず目の前の一番に向き合い続ける。そのプロセスそのものが、彼の相撲だった。

初場所、史上初への王手

そして2026年初場所。東幕下十一枚目。ここで七番全勝すれば、十両への復帰が見えてくる位置だ。

炎鵬は一番、また一番と白星を重ね、十一日目には同じく全勝の栃丸との直接対決を制して六連勝。ちょうどこの一番を、私は会場で見ていた。仕切り、立ち合い、押し込む——あの巧みな取り口は、序ノ口まで落ちた力士のものとは思えなかった。

序ノ口まで番付を落とした者が、一場所で十両へ返り咲く。もし実現すれば、史上初の快挙だった。

十三日目、運命の一番。相手も全勝。勝てば、関取復帰。だが——届かなかった。土俵に大の字になり、天を見上げた。最終的にこの場所は六勝一敗。あと一つが、遠かった。

正直に言えば、見ていて胸が締めつけられた。これだけの物語を背負ってきて、最後にもう一歩が足りない。残酷だと思った。

「道」とは、たどり着くことではない

けれど、しばらく考えて気づいた。私が見ていたのは「失敗」ではなかった。

序ノ口から幕下十一枚目まで戻ってきた、その事実そのものが、すでに途方もない達成だ。十両復帰という結果に届かなかったことばかりに目がいくのは、こちらの勝手な期待のせいだ。彼はただ、自分の道を一歩ずつ歩いていただけだった。

和育道の「道」は、ゴールにたどり着くことを意味しない。自らの道を、自らの足で究め続けること。そのプロセスにこそ価値がある、という考え方だ。

炎鵬は、たどり着いたから尊いのではない。落ちても、壊れても、支えを失っても、また土俵に上がり続けている。その歩みそのものが「道」なのだと思う。結果ではなく、燃え続けること。まさに、しこ名に込められた「炎」の通りに。

初場所のあとも、彼は土俵に立ち続けている。春場所も、夏場所も。物語はまだ終わっていない。

私たちが何かに挑むとき、つい結果を急ぎ、一度の失敗で道を投げ出したくなる。そんなとき、序ノ口まで落ちてなお燃え続けるあの小さな背中を思い出したい。

燃え続ける限り、道は続いている。


この記事は、ある場所で大相撲を観戦した経験をきっかけに書きました。一人の力士の歩みから、「自らの道を究める」とはどういうことかを考えるための、ささやかな記録です。


炎鵬の相撲を、もう一度味わうために

ここまで読んで、あの巧みな取り口を実際に見てみたくなった方へ。炎鵬の相撲、そして大相撲そのものを楽しむための方法をまとめておきます。

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会場で観戦する

やはり、生の迫力は別格です。土俵の近さ、力士の息づかい、館内に響く拍手とどよめき。一度は枡席や椅子席で、あの空気を体感してほしいと思います。私自身、会場で観たあの一番が、この記事を書くきっかけになりました。


*配信内容・サービス仕様は2026年6月時点の情報です。最新の状況は各公式サイトでご確認ください。

現場監督 × バスケットボールコーチ × 地域活動家

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和を敬い × 人を育て × 道を歩む。

和育道~wa-iku~

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