※本記事にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。
始めたことの成果が、なかなか見えない。
そんなとき、私たちは不安になります。やり方が間違っているのではないか。もっと効率のいい方法があるのではないか。そもそも、意味があるのだろうか。
現代は、即効性を求める時代です。すぐに結果が出ないものは、価値がないと判断されやすい。
けれど――今週この場所で取り上げた5人を並べてみたとき、時代も、国も、職業もまったく違うのに、はっきりとした共通点が浮かび上がりました。
誰一人、すぐに結果が出ることを求めていなかったのです。
そして、彼らが遺したものにも、もう一つの共通点がありました。
今日は、それを解き明かしていきます。
証言① ウォーレン・バフェット ―― 数十年で歩む
「オマハの賢人」と呼ばれる投資家です。
彼が最大の武器としたのは、頭脳でも情報でもなく「時間」でした。短期の値動きを追わず、数十年単位で企業と歩む。「私たちの好きな保有期間は、永遠である」――その言葉どおり、彼の資産の大半は人生の後半に築かれたと言われます。複利は、続けた人にしか効かないからです。
(ウォーレン・バフェット――数字に振り回される人と、待てる人)
証言② アレックス・ファーガソン ―― 十年後への投資
26年半にわたってマンチェスター・ユナイテッドを率いた名将です。
けれど、就任からの三年間は無冠。「3年間の言い訳、それでもこのザマか。さらばファーギー」という横断幕まで掲げられました。その時期に彼がしていたのは、若手育成組織を作り直すことでした。
「新しく就任した監督の99パーセントが最初に考えるのは、勝つこと――生き残ることだ。私はそうではなかった。私はクラブを"作り"たかった。土台から作りたかった」
やがてその世代が、クラブの黄金期を築きます。
(アレックス・ファーガソン――「出て行け」と言われた監督が、26年勝ち続けた理由)
証言③ 最澄 ―― 12年、山にこもった
日本天台宗の開祖です。
19歳から31歳まで、12年間、山にこもって修行を続けたと伝えられます。誰にも認められず、名声もない日々です。けれどその12年が、後の彼を作りました。そして彼は「一隅を照らす、これすなわち国宝なり」――自分の持ち場を照らす人こそが宝だと説きました。
(最澄「一隅を照らす」――「自分は大したことをしていない」と思う日に)
証言④ 大原孫三郎 ―― 「十年先が見える」
倉敷紡績を率いた実業家です。
彼の口癖は、「わしの眼は十年先が見える」でした。ただしこれは、未来を言い当ててみせる自慢ではありません。改革に反対する重役たちを押し切るときに、彼が使った言葉でした。
劣悪な労働環境が当たり前の時代に「人を大切にすれば、良い製品ができる」と信じ、批判されながら福利厚生を整えました。そして事業の利益を、社会事業へと投じ続けたのです。
(大原孫三郎――数億円を遊びで溶かした男が、100年後も残るものを遺した)
証言⑤ ムハマド・ユヌス ―― 小さな成功を積み重ねる
グラミン銀行を創設し、ノーベル平和賞を受賞した経済学者です。
彼が始めたのは、たった27ドルの融資でした。一人ひとりの小さな成功を、気の遠くなるほど積み重ねる。「貧しいから返せないのではない。返す機会を、与えられていないだけではないか」――その信念で、貧困と闘い続けました。
5人に共通する、一つ目の真実
誰もが「時間」を味方につけていました。
数十年単位で歩む。十年後を見据えて育てる。12年こもって自分を磨く。十年先を見て判断する。小さな成功を積み重ねる。
彼らは全員、すぐに結果が出ることを求めませんでした。
木も、人も、信頼も、文化も。本当に大きなものは、時間をかけなければ育たない。
そして――時間をかけるということは、「待つ」ということです。
けれど、待つことは「何もしないこと」ではありません。
信じて、支えながら、育つのを見守る。それは、じっとしているようでいて、実は極めて能動的な行為です。
そして、二つ目の真実
実は、この5人には、もう一つ共通点があります。
誰もが、「仕組み」を作った人だった。
バフェットは、長期投資という手法を確立した。
ファーガソンは、若手育成の組織を作り直した。
最澄は、僧侶を育てる教育の場を作った。
大原孫三郎は、病院・研究所・美術館を遺した。
ユヌスは、貧しい人が融資を受けられる銀行を創った。
彼らは、自分一人が頑張ることで終わらせませんでした。
自分がいなくなった後も機能する「仕組み」を作った。
だからこそ、その影響は100年、1000年と続いています。最澄が作った比叡山からは、その後の日本仏教を担う巨人たちが育ちました。大原が遺した美術館と病院は、いまも人を支えています。
一代で終わらせない。次の世代へ、そのまた次の世代へ。
時間を味方につけた人だけが、時間を超えるものを遺せるのです。
今を生きる私たちへ
この5人の生き方から、私たちが持ち帰れることがあります。
成果が見えない時期を、失敗と決めつけない。 ファーガソンの三年間、最澄の12年間。外から見れば「何も起きていない」時期にこそ、後の土台が作られていました。
「待つ」を、能動的な行為として捉える。 焦って手を出したくなるとき、信じて見守るほうが難しく、そして効きます。人を育てるとは、待つことでもあります。
自分が抜けても回るように、作る。 すべてを自分でやると、自分が止まった瞬間に終わります。誰かに渡せる形にしておくこと。それが、続くものを作る条件です。
そして、バトンを受け取っていることを思い出す。 今あなたが関わっているものの多くは、誰かが積み重ねてきたものです。長く続いているものには、必ず、つないできた人たちがいます。
おわりに
すぐに結果が出ないと、不安になります。それは自然なことです。
けれど、今日の5人が教えてくれるのは、本当に価値あるものは、たいてい時間がかかるという、シンプルな事実でした。
そして彼らは、その時間の先に、自分がいなくなっても残るものを遺しました。
長く続いている行事、組織、習慣。その一つひとつの背後には、何十年もバトンをつないできた誰かがいます。
そして今、あなたもそのバトンを持っているかもしれません。
いつか、次の誰かに渡す日まで。
焦らず、長い目で、一歩ずつ。
その積み重ねが、いつか誰かの「当たり前」を支えていきます。
(先週のまとめは5人の賢者――歴史に名を刻んだ彼らは、全員「持たざる者」だったです)

今回の5賢者ガイド ―― もっと深く出会うための5冊
今日登場した5人。「最も響いた一人」から、その言葉の源にそっと触れてみてください。
『バフェットからの手紙[第8版]』(パンローリング・ローレンス・A・カニンガム 編)
株主への年次書簡をまとめた一冊。投資の本でありながら、その本質は「誠実に、長期的に生きること」の哲学です。
『ファーガソンの薫陶 勝利をもぎ取るための名将の心がまえ』(幻冬舎・田邊雅之)
日本のサッカージャーナリストが、ファーガソンの組織マネジメント術と「心がまえ」を解き明かした本です。※本人の著書ではなく、退任前年(2012年)に書かれたもの。楽天では現在、電子版のみの取り扱いです。
『雲と風と 伝教大師最澄の生涯』(中公文庫・永井路子)
直木賞作家が最澄の生涯を描いた長編小説です。仏教書というより「一人の人間の物語」として読めます。
『わしの眼は十年先が見える ―大原孫三郎の生涯―』(新潮文庫・城山三郎)
タイトルは、大原の口癖そのもの。放蕩の日々からの転換、常識外れの経営が、一級の人物伝として描かれています。
『貧困のない世界を創る ソーシャル・ビジネスと新しい資本主義』(早川書房・ムハマド・ユヌス/猪熊弘子 訳)
ユヌス自身が「ソーシャル・ビジネス」という事業のかたちを提唱した一冊。人を信じることを、どう仕組みに落とすか。
