和育道〜wa-iku〜
和の章

マザー・テレサ「愛は家庭から」――手を合わせたあと、身近な人の顔を見る

Mother Teresa — Catholic nun and humanitarian based in India (1910–1997) Read in English ↓

感謝や祈りを、日々の関わりへつなぐには。秋分の日に、マザー・テレサの短い言葉から、そばにいる人へのまなざしを見直します。

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朝の光が差す部屋。白い衣の人が戸口に立ち、奥に腰を下ろした人たちがいる(イメージ挿絵:和育道)
朝の光が差す部屋。白い衣の人が戸口に立ち、奥に腰を下ろした人たちがいる(イメージ挿絵:和育道)

感謝や祈りを、日々の関わりへつなぐには。秋分の日に、マザー・テレサの短い言葉から、そばにいる人へのまなざしを見直します。

思いを向ける先は、遠くにも近くにも

9月23日は秋分の日です。彼岸の中日に、先に生きた人や亡くなった人を思い、手を合わせる方もいるでしょう。その時間は、自分の暮らしを支えてきたつながりに気づく入口にもなります。

祈り方も、宗教との距離も、人によって違います。それでも、目に見えない支えを思ったあと、今そばにいる人のことを考える時間は持てます。忙しさの中で、声をかけそびれている人はいないでしょうか。

大きな舞台で語られた、身近な始まり

マザー・テレサはインドで、困窮する人たちに寄り添う活動を続けたカトリックの修道女です。1979年、ノーベル平和賞を受けた際の講演で、次の言葉を述べています。

「愛は家庭から始まります。」

――ノーベル平和賞受賞講演の一節、WA-IKU訳。ノーベル賞公式・受賞講演

世界へ向けて話す場で、彼女は家庭に目を戻しました。講演では、行為の量だけでなく、そこにどれほど愛を込めるかを問いかけています。遠くの大きな課題を気にかけることと、近くの人に注意を向けることを、切り離さない姿勢が感じられます。

家庭という言葉を、誰もが同じ家族の形で暮らすべきだという命令として受け取る必要はないでしょう。私たちの暮らしへ引き寄せるなら、身近な関係から始めるという読み方もできます。

気づかれない寂しさに、席を空ける

必要な物を渡すだけでは届かない思いがあります。頼み事はないと言いながら、少し話したそうな人。周りに合わせて笑っているけれど、輪に入りにくそうな人。その気持ちを外から決めつけず、話せる余地をつくることも、関わりの始まりです。

食卓の器を並べ、相手のために席を空ける。これは彼女の実際の1日を再現した逸話ではなく、言葉を日常で考えるための風景です。食事を急いで終える前に、ひと言を待ってみる。小さな行為にも、相手を大切に思う気持ちは表れます。

もちろん、どんな関係にも無理をして近づけばよいわけではありません。休むことや、安全な距離を保つことも必要です。自分をすり減らさずに差し出せる関心を探す。その範囲で始めることも、身近な人を大切にする方法になると思います。

今を生きる私たちへ

1つめ。挨拶のあとに少し待つ

声をかけたらすぐ別の用事へ移らず、相手が返す言葉を待つ。急がせない短い間をつくります。

たとえば、「おかえり」と言ったあと、すぐ台所に戻らずに3秒だけ相手の顔を見る。その3秒があるかどうかで、子どもが今日の出来事を話し出すかどうかが変わります。

2つめ。気持ちを決めつけずに尋ねる

寂しいはず、喜ぶはずと先回りせず、どう過ごしたいかを聞く。相手の答えを尊重します。

たとえば、試合に負けて帰ってきた子に「悔しかったね」と先に言わず、「どんな試合だった?」と聞いてみる。悔しさより先に、その子が話したいことは別にあるかもしれません。

3つめ。気にかけていると伝える

大きな贈り物を用意できなくても、思い出したことを短い言葉にして届ける。返事を強く求めずに伝えます。

たとえば、ふと親のことを思い出した日に、「元気にしてる?」の一行だけ送ってみる。返事が来なくてもかまいません。思い出したことが届けば、それで十分です。

4つめ。無理なく続く関わりを選ぶ

できない約束を重ねず、今の自分が引き受けられることを選ぶ。続けられる小ささも大切にします。

たとえば、「毎週電話する」と決めて三週目で途切れるより、「月に一度、第一日曜に」と決めておく。続いている連絡のほうが、相手には安心として残ります。

おわりに

手を合わせる時間が、暮らしの中へ続いていく。そんなつながり方もあるのだと思います。遠くの立派な行いを待たず、そばの人へ心を向ける。目には見えない思いが、ひと言や短い時間という形を持ち始めます。

次回は、思いどおりにならない世界を受け止める、詩の言葉を訪ねます。

木の食卓に、ふたりぶんの器。誰かのために空けておく席(イメージ挿絵:和育道)
木の食卓に、ふたりぶんの器。誰かのために空けておく席(イメージ挿絵:和育道)

あわせてどうぞ:昨日のジャッキー・ロビンソン――同じグラウンドに立てることを、当たり前にしない。同じ街の貧しさのなかに住み込んだ日本人の話は賀川豊彦――生協も共済も、スラムに14年住んだ一人から始まった。翌日の記事は一休宗純「雨ふらば降れ 風ふかば吹け」――思いどおりにならない日にも、居場所はある。


この人物を、もっと知りたい方へ

『マザー・テレサ 愛と祈りのことば』(PHP研究所・ホセ・ルイス・ゴンザレス=バラド 編/渡辺和子 訳) 短い言葉を集めた一冊。訳者は『置かれた場所で咲きなさい』の渡辺和子さんです。今回引いたノーベル賞受賞講演の全文は、記事内のリンク先(ノーベル賞公式)で読めます。

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『マザー・テレサ 愛のことば』(女子パウロ会・いもとようこ 絵) 絵とともに言葉が並ぶ、薄くてやわらかい本。子どもと一緒にめくるのにも向いています。

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『愛のあるところ、神はそこにおられる』(女子パウロ会・ブライアン・コロディエチュック 編) より深く読みたい方へ。手紙や講話から、本人が何を考えて動いていたのかをたどれます。

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人物プロフィール

マザー・テレサ(1910–1997)

カトリックの修道女。インドを拠点に困窮する人たちへの奉仕を続け、1979年にノーベル平和賞を受賞。ひとことで:身近な人への愛を実践しようとした人。

マザー・テレサが暮らした場所

マザー・テレサが暮らし、活動の拠点とした修道会の本部。

コルカタのマザー・ハウス。「神の愛の宣教者会」の本部で、マザー・テレサはここで暮らした(写真:Wikimedia Commons/Achilli Family|Journeys/CC BY 2.0)
コルカタのマザー・ハウス。「神の愛の宣教者会」の本部で、マザー・テレサはここで暮らした(写真:Wikimedia Commons/Achilli Family|Journeys/CC BY 2.0)
朝もやのハウラー橋。マザー・テレサが半世紀を過ごした街、コルカタを流れるフーグリー川に架かる(写真:Wikimedia Commons/Dey.sandip/CC BY-SA 3.0)
朝もやのハウラー橋。マザー・テレサが半世紀を過ごした街、コルカタを流れるフーグリー川に架かる(写真:Wikimedia Commons/Dey.sandip/CC BY-SA 3.0)
マザー・テレサが活動した西ベンガル州(赤色)。インドの東、ベンガル湾に面する州(地図:Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0)
マザー・テレサが活動した西ベンガル州(赤色)。インドの東、ベンガル湾に面する州(地図:Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0)
西ベンガル州のなかのコルカタ(赤色)。フーグリー川の東岸に広がる、インド有数の大都市(地図:Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0)
西ベンガル州のなかのコルカタ(赤色)。フーグリー川の東岸に広がる、インド有数の大都市(地図:Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0)

この土地へ行くなら

インド・コルカタインド・西ベンガル州 コルカタ

フーグリー川の東岸に広がる、人であふれた大きな街です。テレサはここで半世紀を過ごしました。活動の拠点だったマザーハウスは、立派な記念館ではなく、今も修道会が日々使っている建物です。道ばたの雑多さも、花の色の鮮やかさも、そのまま残っています。きれいに整えられた場所を見に行くのではなく、彼女が毎日歩いた通りをそのまま歩ける街です。

赤の①②③は歩く順、藍色の a・b・c は寄り道の場所。左の小さな2枚は、インドのなかと、ベンガル地方のなかでの位置。(地図:© OpenStreetMap contributors © OpenMapTiles/Powered by Geoapify)

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歩く順

  1. 1マザーハウスマザーハウス神の愛の宣教者会の本部。テレサの墓と、使っていた小さな部屋がそのまま残る。今も修道女たちが暮らし、働いている建物写真:Wikimedia Commons/flowcomm/CC BY 2.0
  2. タクシーで20分ほど(南へ)
  3. 2ニルマル・ヒリダイ(死を待つ人の家)ニルマル・ヒリダイ(死を待つ人の家)1952年に始まった、行き場のない病者のための家。カーリー寺院のすぐ隣にある。看板には今も「1952」の数字が残る写真:Wikimedia Commons/thotfulspot/CC BY 2.0
  4. タクシーで30分ほど(川のほうへ)
  5. 3ハウラー橋ハウラー橋フーグリー川に架かる、この街の象徴。鉄の骨組みが朝もやに浮かぶ。歩いて渡れる写真:Wikimedia Commons/Dey.sandip/CC BY-SA 3.0
Googleマップで経路を開く >

寄り道するなら

時間があれば

この土地の一皿

マザーハウスもニルマル・ヒリダイも、今も使われている施設です。見学できる時間が決まっているので、公式サイトで確かめてから行ってください。

どちらも中で暮らしている人がいます。写真を撮る前に、必ず断りを。

開館時間や料金は変わることがあります。おでかけ前に公式サイトでご確認ください。

拡大した地図ac
  • 1マザーハウス
  • 2ニルマル・ヒリダイ(死を待つ人の家)
  • 3ハウラー橋
  • aビクトリア記念堂
  • bマリック・ガートの花市場
  • cインド博物館

ENGLISH SUMMARY

Mother Teresa — Catholic nun and humanitarian based in India (1910–1997)

“Love begins at home.”

— Nobel Peace Prize lecture, 1979

Mother House, Kolkata, West Bengal, India

Speaking to the world at the Nobel ceremony, she turned attention back to the home.

Her words invite us to notice the loneliness of people who are easy to overlook.

A small act of attention — waiting for someone's words — can make care tangible.

働き盛りの会社員 × バスケコーチ × 地域活動家

~すべては、愛から~

和を敬い × 人を育て × 道を歩む。

和育道~wa-iku~

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