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感謝や祈りを、日々の関わりへつなぐには。秋分の日に、マザー・テレサの短い言葉から、そばにいる人へのまなざしを見直します。
思いを向ける先は、遠くにも近くにも
9月23日は秋分の日です。彼岸の中日に、先に生きた人や亡くなった人を思い、手を合わせる方もいるでしょう。その時間は、自分の暮らしを支えてきたつながりに気づく入口にもなります。
祈り方も、宗教との距離も、人によって違います。それでも、目に見えない支えを思ったあと、今そばにいる人のことを考える時間は持てます。忙しさの中で、声をかけそびれている人はいないでしょうか。
大きな舞台で語られた、身近な始まり
マザー・テレサはインドで、困窮する人たちに寄り添う活動を続けたカトリックの修道女です。1979年、ノーベル平和賞を受けた際の講演で、次の言葉を述べています。
「愛は家庭から始まります。」
――ノーベル平和賞受賞講演の一節、WA-IKU訳。ノーベル賞公式・受賞講演
世界へ向けて話す場で、彼女は家庭に目を戻しました。講演では、行為の量だけでなく、そこにどれほど愛を込めるかを問いかけています。遠くの大きな課題を気にかけることと、近くの人に注意を向けることを、切り離さない姿勢が感じられます。
家庭という言葉を、誰もが同じ家族の形で暮らすべきだという命令として受け取る必要はないでしょう。私たちの暮らしへ引き寄せるなら、身近な関係から始めるという読み方もできます。
気づかれない寂しさに、席を空ける
必要な物を渡すだけでは届かない思いがあります。頼み事はないと言いながら、少し話したそうな人。周りに合わせて笑っているけれど、輪に入りにくそうな人。その気持ちを外から決めつけず、話せる余地をつくることも、関わりの始まりです。
食卓の器を並べ、相手のために席を空ける。これは彼女の実際の1日を再現した逸話ではなく、言葉を日常で考えるための風景です。食事を急いで終える前に、ひと言を待ってみる。小さな行為にも、相手を大切に思う気持ちは表れます。
もちろん、どんな関係にも無理をして近づけばよいわけではありません。休むことや、安全な距離を保つことも必要です。自分をすり減らさずに差し出せる関心を探す。その範囲で始めることも、身近な人を大切にする方法になると思います。
今を生きる私たちへ
1つめ。挨拶のあとに少し待つ
声をかけたらすぐ別の用事へ移らず、相手が返す言葉を待つ。急がせない短い間をつくります。
たとえば、「おかえり」と言ったあと、すぐ台所に戻らずに3秒だけ相手の顔を見る。その3秒があるかどうかで、子どもが今日の出来事を話し出すかどうかが変わります。
2つめ。気持ちを決めつけずに尋ねる
寂しいはず、喜ぶはずと先回りせず、どう過ごしたいかを聞く。相手の答えを尊重します。
たとえば、試合に負けて帰ってきた子に「悔しかったね」と先に言わず、「どんな試合だった?」と聞いてみる。悔しさより先に、その子が話したいことは別にあるかもしれません。
3つめ。気にかけていると伝える
大きな贈り物を用意できなくても、思い出したことを短い言葉にして届ける。返事を強く求めずに伝えます。
たとえば、ふと親のことを思い出した日に、「元気にしてる?」の一行だけ送ってみる。返事が来なくてもかまいません。思い出したことが届けば、それで十分です。
4つめ。無理なく続く関わりを選ぶ
できない約束を重ねず、今の自分が引き受けられることを選ぶ。続けられる小ささも大切にします。
たとえば、「毎週電話する」と決めて三週目で途切れるより、「月に一度、第一日曜に」と決めておく。続いている連絡のほうが、相手には安心として残ります。
おわりに
手を合わせる時間が、暮らしの中へ続いていく。そんなつながり方もあるのだと思います。遠くの立派な行いを待たず、そばの人へ心を向ける。目には見えない思いが、ひと言や短い時間という形を持ち始めます。
次回は、思いどおりにならない世界を受け止める、詩の言葉を訪ねます。

あわせてどうぞ:昨日のジャッキー・ロビンソン――同じグラウンドに立てることを、当たり前にしない。同じ街の貧しさのなかに住み込んだ日本人の話は賀川豊彦――生協も共済も、スラムに14年住んだ一人から始まった。翌日の記事は一休宗純「雨ふらば降れ 風ふかば吹け」――思いどおりにならない日にも、居場所はある。
この人物を、もっと知りたい方へ
『マザー・テレサ 愛と祈りのことば』(PHP研究所・ホセ・ルイス・ゴンザレス=バラド 編/渡辺和子 訳) 短い言葉を集めた一冊。訳者は『置かれた場所で咲きなさい』の渡辺和子さんです。今回引いたノーベル賞受賞講演の全文は、記事内のリンク先(ノーベル賞公式)で読めます。
『マザー・テレサ 愛のことば』(女子パウロ会・いもとようこ 絵) 絵とともに言葉が並ぶ、薄くてやわらかい本。子どもと一緒にめくるのにも向いています。
『愛のあるところ、神はそこにおられる』(女子パウロ会・ブライアン・コロディエチュック 編) より深く読みたい方へ。手紙や講話から、本人が何を考えて動いていたのかをたどれます。
人物プロフィール
マザー・テレサ(1910–1997)
カトリックの修道女。インドを拠点に困窮する人たちへの奉仕を続け、1979年にノーベル平和賞を受賞。ひとことで:身近な人への愛を実践しようとした人。
マザー・テレサが暮らした場所
マザー・テレサが暮らし、活動の拠点とした修道会の本部。











